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TAKASHI BLOG

この世で一番美しいものは、ずっと連れ添った老夫婦の後ろ姿だった。

Written by Takashi Yamanaka

また旅をしたい。いろんな景色がみたい。

ちょうど一年前にタイのパンガン島へ行く道中のサムイ島でのできごとを回想する。

カンカンの日差しの中、ぐんぐん歩く。汗が吹き出る。
あぁ。何やってるんだろうと思う。

あと1時間頑張ろう。
なんとか意地で歩き始めたとき、急に黒い雲が一面広がって、
あれ?と思ってたら
ついにポツ、ポツと滴が落ちてきた。
この地域ではこの季節、夕方から夜にかけて豪雨になるという。

「だめだ、終了だ・・・」。

僕は何かがプツリと切れてとてもとても悲しくなって、
もう疲れたとか、あそこには寝たくないとか日本人特有の「わがまま」が僕らを包む。

びっしょり濡れたヤシの木はこと、東南アジアのスコールが降るシーズンではとりたてて珍しくない景色だ。

僕はくるりと背を向けて再び歩き出し、
「弱いなぁ自分・・・感謝忘れたら終わりだな・・・」
と日本のどこかにいる相手に向けて言った意味と、自分の心を何度も確かめた。

さっきよりももっともっと悲しくなって、絶望的な気持ちになった。
雨が強くなり始めた。

目的地に向かうバス停へ着いたけれど、雨避けのルーフが壊れて骨だけになっていた。
僕はそれを呆然と眺めることしかできなかった。

近くにのコンビニ立ち寄り、チョコレートコヒースムージを買った。ちょっと高いのに。
中にあるベンチに並んで座り、厚い雨雲で真っ暗になった外を見つめながら

僕は心の中を隣に居合わせた旅人に胸の内をぶちまけた。
静かな声で、ゆっくりと、胸の内をぶちまけた。

「タイまできたけれど、僕はちっとも強くなってないし、立派にもなってないし、
むしろ悪くなってる。弱くなってわがままになってると思う。サイアクだよ。もっといろんな遺跡や風景、景色を見たらこの悩みからも解き放たれるのだろうか。ちいさなことで喧嘩して、離れ離れになる男と女みたいに。この想いずっと続くのかな?」

彼は言った。

「僕はね、今まで世界各国バックパックでいろいろと旅をしてきたよ。もちろん色んな世界遺産も見たし、美しい地中海やヒマラヤ山脈やヨーロッパの美しい野景色から伝統的な建築物まで…だけどね、そのどれよりも美しかった光景がある。未だかつてあれを超える光景に出会ったことはない。」

「それは何?」

僕は思わず間髪入れずに聞き返してしまった。

「それは、長年ずっと連れ添ったであろう老夫婦の後ろ姿だよ。あんなに美しい光景は地球上に存在しないんじゃないか?ってくらい幸せな気持ちになれたんだ」

もちろん何度か別れようと思ったことがあっただろう。何度もケンカして、何度も恋をして、それでも互いが諦めずに一緒に居て、同じ時間。同じ景色の中で包まれて生きていく。

そんな尊い「二人だけの時間の重み」を後ろ姿で感じてしまった時、彼の中で何かが変わってしまったのだろう。

「さようなら」と別れたその後も、きっと互いが互いを思い、枕元を濡らした数えきれない夜を飛び超え今日、仲良く手を繋ぎ寄り添い歩く。

そんな当たり前のような風景が日本には少なくなっているのが残念だけれど、

 

自分が相手を好きな所以となる、一番の魅力はどこにあるのか。
相手を人として尊敬できる、「芯」や言動はどういうものなのか。
相手がその人らしく居られる、相手の「核」は何なのか。
相手の一番の幸せは、この世で果たしたい使命は、何なのか。

 

そういうこと含め、誰よりも一番よく知っていてくれるのがパートナーであり、
もしそこから離れていったら、一番元気の出るやり方で
ひっぱり上げてくれるのがパートナーだろう。

変化のベクトルとスピードの中で二人が離れてしまわないように
お互い引っ張り上げあい、ハッパをかけあい、褒めあいながら、
一緒に変化し続けていけるのが夫婦だと思う。
何度でも、何度でも、何度でも、
変化を確かめ合い、試行錯誤し時折、犠牲を払いながら、必要があれば修復して。

 

それが夫婦なんじゃないかと思う。

タイの旅を終えようとしていたあの時、少なくとも今の僕は、そう思ったんだ。

そして今日それを思い出した。

 

だから。
今ダメダメなのは、外面はどんどん衰えていくのは、百も承知だけど、
もっとカッコよく、もっとあったかく、もっととらわれず、
もっともっと、変わっていきたい。
変わっていきたいんだ。

 

そういえば誰かがよく言ってたっけ。

「男は矢、女は弓。」

夫がどこまで高く、遠くまで飛べるかは、妻の度量にかかってるって。
ほんとそうだな、と思うし、逆もまたしかりなんだよな、と思う。
口で屁理屈をこねるんじゃなく、
姿で、顔で、態度で、見せていけたのならば。

まずは大きな愛を。
すべては、なんどでも、始まる。

今、世界中のケンカ中の迷えるカップルたちに捧げます。

 

“When A Man Loves A Woman”

Percy Sledge

※タップ(クリック)すると曲が流れます。

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