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TAKASHI BLOG

甘かった。

Written by Takashi Yamanaka

結婚した妹のところへ家族で遊びに行った時の話。

名古屋で嫁いでなんとかやってる。

帰りの道中で車から見えた「本日オープン こだわりのパスタ」

という看板がでかでかと掲げられていた。見ると古民家をリノベーションされた建物で営業されているとっても小洒落た「本格派イタリアン」という感じのお店。

お店に入ったのが2時前でランチのピークも越えていた頃だったと思う。

メニューは単品のものはドリンク以外は無い。

パスタorピザを選択できるコース料理オンリーのお店。

うん。フランス料理ならわかるけど、イタリアンでコース料理オンリーって結構こだわってるんだろうな。と思った。

パスタは数種類の中から選べる様になっていて注文は僕だけパスタ大盛りで全部で4人分のコースを注文した。

コースはサラダ、スープ、パスタ、デザートと出てきて、先に僕以外の三人分のメインのパスタはもう到着。

みんな「うわっ〜おいしい!」感動しながら食べてる。

まだかな〜?と僕は少年の様な気持ちでメインのパスタを待っていた。

すると、遠くの方からシェフらしき男性が歩いてきてこう言った

「お客様…大変申し訳ございません。当店のチェックミスによりガスの不具合で火が使えなくなってしまいお客様のパスタがご用意できません。」

え〜?

いや、別に怒りとかじゃなくて、ただただ残念だった。
食べたかった。とにかく食べたかった。みんな目の前で美味しそうに食べてるし(笑)

結局、僕の分だけ、みんなにシェアしてもらったんだけど、食感が違う。ホント美味しくって感動した。こんな美味しいパスタ食べたことないわってくらい美味しい。

その後に出てきたデザートのティラミスは、自分の分も出てきたんだけど口当たりと程よい甘さ加減が絶品だった。

料理人として

デザートを完食し、お会計をしようとレジに向かうと

シェフが奥から出てきてこう言った。

「本日は、こちらの不手際でメインをお出しできないとう失態をしてしまい大変申し訳ございません。言い訳になってしまいますが、本日がオープン日で火の周りのチェックが甘く、トラブルにより調理できなくなってしまいました。」

シェフ自身が、かなり落ち込んでいるようだった。

メインのパスタを食べれなかったのは残念だったけど「いや、他のみんなから少しづつパスタいただきましたが、ホントに感動しました。美味しかったです。」と返答した。

こういう場合、パターン的に僕が食べれなかった分のパスタ代を引いいて請求するのが一般的なんじゃないかな。

お会計の際にシェフが切り出した言葉がプロだった。

「ありがとうございます。今日のお代は結構です。」

え?

これは僕のコース分だけはお代は頂きません。という意味でいいんだよね?と思い、「すみません」と言いながら、残り三人分のお題を払おうとすると

「申し訳ないのですが受け取れません」と言うわけだ。

「いやいや、他の三人はコース全ていただいたのでお支払いさせてください」と返事をする。

すると「受け取れません」

このやりとりが4、5回繰り返されたが、シェフは頑としてお代を受け取らない。
向こうのシェフの目は本気なのだ…
結局、僕たちはお代を払えないままなんだか申し訳ない気持ちでお店を出た。

コース料理の価値

帰りの車の中で「プロフェッショナルについて」小一時間話し合った。

店をオープンして、初期投資には何百万も何千万もかかっているわけで、当たり前だけど本当なら一円でも多く回収したいのハズ。
まして本気でこだわって作っておられるから、時間も材料費もコスト面では割高だ。
それでも、自身がコース(サービス)を提供しきれなかった事をプロフェッショナルとして自問自答され
出てきた答えが=絶対にお代は受け取らない

欠品したパスタの分だけ引いて請求も出来ただろう。

一人前のコース分だけ引いて請求も出来ただろう。

パスタがダメならピザを釜で焼いて出せたかもしれない。

違う。

シェフはそのテーブルに囲まれた空間の4人に対してのサービスをプロとして提供出来なかったからお代を受け取らなかった。

僕が「甘かった」。

コースメニューを同じ順番で同じタイミングで口に運んで喜びを共有する。
これがコース料理の”価値”なんだ。

料理を生業にするってそんな甘いもんじゃない。
勉強させていただいた。

車で片道一時間半。

また時間を作って あのシェフに会いに行こう。

 

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